詩篇講解(NO.118)「暗闇の中の歌」118篇10~29節
仁井田義政 牧師
この118篇は、宗教改革者マルチン・ルターがこよなく愛した詩篇です。しかし、今日はルターのことを話そうとしているのではなく、もっと激しい迫害を受けられたイエス様をお話しするのです。この詩は、イエス様がゲデロンの谷で読まれたものと言われているのです。
★最後の晩餐の後、イエス様と弟子達は、祈るためにオリーブ山に向かわれました。そこはいつもの祈りの場所だったので、イエス様はそこにユダが敵を連れて来ることも知っておられました。イエス様は、そこで捕えられ、なぶり者にされ、殺されることも知っておられました。
★イエス様は、エルサレムの町を出たゲデロンの谷の辺りで、この詩篇を歌われました。その歌は「主に感謝せよ」で始まり、「主の恵みはとこしえまで」と、しかも3回も繰り返される歌でした。「主は私の味方。・・・主に身を避けることは、君主たちに信頼するよりも良い」(6~9節)と、ルターも自分と重ねてこの詩篇を読んだのです。この詩篇には、その強力な悪に「私は主の御名によって断ち切ろう」と3回も出てきます。イエス様が「私の名によって祈りなさい」と教えています。
★さらに18節には「主は私をきびしく懲らしめられた。しかし私を死に渡されなかった」と記されています。それは十字架と甦りの預言です。それは人々が捨てた石、それが「礎の石となった」(22~24節)と記されている事から見ても明らかです。イエス様ご自身が、マタイ21章42節でこの言葉をご自身のこととして引用しておられます。さらには、25節の「ああ、主よ。どうぞ救ってください」との言葉は、イエス様がエルサレムに入られる時に、人々が叫んだヘブル語の「ホサナ」と言う言葉なのです。
★イエス様は、十字架に向かう暗闇の道を歩みつつ、この歌を歌われたのです。私達にも、イエス様が通られた「ゲデロンの谷の暗闇」のような時があるかもしれません。そのような時にも「あなたは、私の神。私はあなたに感謝します。主に感謝せよ。主はまことにいつくしみ深い。その恵みはとこしえまで」と歌うようなクリスチャンとなりましょう。